アップル新マウス誕生までの足跡


1984年に登場したオリジナルMac以来、すべてのデスクトップMacにマウスを同梱してきたAppleの自信とプライド、そしてアップルを支えてきたすべての男たちのDNAが「Mighty Mouse」というカタチとなって登場した。
Appleは8月2日マルチボタンとスクロールボール搭載のApple新マウス「Mighty Mouse」を発表した。しかしその誕生までの道のりには壮絶な苦労があったようだ。

アップル社は米ゼロックス社の有名なパロアルト研究所(PARC)で開発されたスリーボタンマウスをベースにワンボタンマウスを開発した。この開発からアップルはマウスオペレーティングを世界中に広めることになる。

享年61歳でこの世を去った「マッキントッシュの父」ジェフ・ラスキン氏は、ワンボタンマウスをめぐってマックデザインチームの他のメンバーと衝突し、さらには3つボタンマウスの採用を強く求めたジョブズとも衝突し確執まであったという。

「ワンボタンはより速く、より効率的であり、使い方を覚えるのもずっと簡単だった。(私自身を含む)PARCの人々が、マウスを使用する際にしばしば間違ったボタンを押してエラーを出していることに私は気づいた。これが、よりよいものを作ろうという刺激を私に与えてくれた」。ラスキン氏は回想録でこう述べている。ラスキン氏はマウスを「ダブルクリック」することすら気に入らなかったという。ワンボタン、ワンクリックのマウスを求めていたのだ。

こうして最終的に1984年にオリジナルのマッキントッシュに導入されたワンボタンマウスは、マックの「エレガントなシンプルさの象徴」そして「使いやすさ哲学」の中核をなすものでアイコンやウィンドウなどとともに、マッキントッシュ・インターフェースの使いやすさのシンボルとなった。しかし周囲からは、ワンボタン式は救いがたいほど時代遅れだ、すでに世の中から7?8年も遅れている。と馬鹿にされることが多く、「ボタンは1つか2つか」という議論が少し前からマック界で盛んになりつつあった。

今現在、全世界のパソコンの95%がツーボタンを採用している。ツーボタンは間違いなく、マックのインターフェースが自然に進化した結果なのだ。世間はツーボタンを好んでいるのだから、これを否定する必要などあろうか?」

そして、当のアップル社でさえ、ワンボタンマウスの短所に気がついているようだ。数年前から、アップル社はマッキントッシュOSに『コンテクストメニュー』を追加している。しかしコンテクストメニューを表示するには、コントロールキーを押しながらマウスボタンをクリックしなければならず、メニューの使いやすさがいくぶん失われてしまっていた。

一方ではMacintoshがMacintoshである限りは標準は1ボタンマウスであって欲しいと願うユーザーも少なくない。

Appleは8月2日マルチボタンとスクロールボール搭載のApple新マウス「Mighty Mouse」を発表した。シームレスな一体型の本体にプログラマブルなタッチセンサーを組み込み、ユーザーの好みに応じて1ボタンマウスとしても、マルチボタンマウスとしても利用できるようにした。アップル社のDavid Moody(Mac製品マーケティング担当バイスプレジデント)によると、同社は、スクロールと複数ボタンの機能を持ちながら、1ボタンマウスと同じように簡単に使えるものがデザインできるようになるのを待っていたという。「市場には、膨大な種類のマルチボタンマウスが出回っているが、これらにはどこかしら複雑な部分がある。デザインや使いやすさでは絶対に妥協するつもりはなかった」

以前インタビューの中でマックOS Xがマルチボタンマウスをサポートするのかという質問に対し、アップル社はあいまいの見本のような口ぶりで、それはイエスでもあればノーでもあると答えた。今おもえばその回答は間違いではなかった。

アップルCEOのジョブズと共同でアップル社を設立したSteve Wozniakは、、「新しいマウスはスタイルが変わっておらず、無条件で気に入った。いまは、普通のユーザーのように様子見の段階だが、店頭で見かけたら1つ買うかもしれない」と述べている。

1984年に登場したオリジナルMac以来、すべてのデスクトップMacにマウスを同梱してきたAppleの自信とプライド、そしてアップルを支えてきたすべての男たちのDNAが「Mighty Mouse」というカタチとなって登場した。